新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第71・72回2018/8/12・14 朝日新聞

 墓が維持され続ける条件を考えてみた。
①家が代々受け継がれ、家を受け継ぐ人、本家の長男と呼ばれる人がいること。
②地域にはその地域の墓地があり、墓地に墓参する人々がいること。
 この条件が成り立つために、さらにいくつかのことが考えられる。
①a一人の人に三人以上の兄弟がいて、そのうちの誰かは、生まれ故郷の家に住み続けること。
①b都会でも田舎でも、それぞれの地域に産業が成り立ち、その地域に定着している人々がいること。
①c人は結婚し、夫婦で子どもを育てること。
 要は、人口が増え続けなくても、減少しないことが必要だ。
②a大都市一極集中でなく、町村単位の自治体が維持されること。
②b市町村が行政の単位としてだけでなく、地域の共同体として機能すること。
 要は、血縁と地縁を基盤とした家族同士のつきあいがあることが必要だ。
 こうやって並べてみると、すべて現代の動向と逆のような気がする。

 私も、夏子の感覚に近い。
 結婚しない子がいて、今所有している宅地も家も、受け継がれる可能性の方が薄い。そういう状況の中で、墓だけが受け継がれていくことはないと思う。