新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第73回2018/8/15 朝日新聞

 結婚した夫婦がうまくいかなくなったら、我慢をしないで離婚するのが理に適っている。離婚しても、再婚したい相手に出会えば、再婚することも当然だ。洋一郎の母と義父のように、再婚の双方に子がいて、その子どもたちが一つの家族になり、仲良くなるのは感動的ですらある。
 だが、その再婚した両親が老いていくと、難しいことが生じるのを改めて感じる。
 これも、ひと時代前なら、独立した子どもたちにとって、両親の生存時間はそれほど長くなかったので、現代のような難題は目立たなかったのだと思う。

 隆さんが二世帯住宅に建て替えたことも、隆さんが亡くなって、一雄さんがリフォームしたことも、母のことをないがしろにしているとは考えられない。むしろ、一雄さんが血の繋がっていない老いた母と同居するという選択したことは、義母を大切にしていると思う。

 だが、洋一郎の姉のようにリフォームに不満を感じるのも、わかる気はする。わかる気はするが、自分の気持ちを優先させる姉のような態度は嫌いだ。