新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第92回2018/9/3 朝日新聞

 私の住む市にも高齢者の優待パスがある。私は、今年はじめてそれを申請した。はじめて手にすると非常に得をした気分になった。だが、実際に使ってみると、それは決して老人を優遇するための制度ではなかった。
 公共交通機関の優待パスを使うのは、暇な時間を潰す場合が多い。働いていて通勤に使うという人もいるであろうが、多くは、趣味や遊びのために使っていると思う。優待パスがなければ、交通機関を使わないか、使う回数を減らすことのできる外出だと思う。医療機関を受診する場合もあるが、これも必要以上に医療機関に行く人もいると聞く。
 料金を安くしたり、税金を投入しても、それに見合う収益があるからこういう制度が維持できるということだ。
 有料老人ホームにしても、それが企業として成り立つから、増え続けているのだ。
 経済力のない高齢者は、これからはどんどん切り捨てられていくのではないか。