新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第95回2018/9/6 朝日新聞

 洋一郎が、父について聞かされてきたのは、「お金にだらしがなくて、身内にも迷惑をかける人」が一番多かったと思う。それだけに、父が家賃を遅れるとことなく払っていたと聞いて、「ほっとした」のだ。洋一郎のこの感覚は責められるようなことではない。
 父が家族(母や子)に迷惑をかけるだけで辛いことはこの上ない。さらに、家族だけでなく親類や他人にさえ迷惑をかけたとなると、子の立場としては、どれほど辛く肩身の狭いことか想像ができる。
 父がまじめに働き、しかもお金にもきちんとしていた、と聞かされたのは、川端さんからがはじめてのことだったろう。