新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第99回2018/9/11 朝日新聞

 洋一郎の心情がだんだんに明らかになる。

 父が暮らした部屋を細部まで観察し、その部屋の家具の配置やのこされている生活用品から、父の暮らしと父の思いを再現しようとしている。それは、まるである種の捜査のようであり、プロファイリングのようでもある。
 洋一郎には、姉を介して頼まれたことをいやいやながらだが、やろうという感じがあった。だが、父の部屋を見ている洋一郎に、それを義務でやっている感じやサッサと済ませようという感じはまったくなくなっている。
 
 むしろ、生きていた時の父の暮らし方や思いをなんとか再現しようという気持ちが感じられる。