新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第102回2018/9/14 朝日新聞

 洋一郎の実の父がどうゆう人であったかは、描かれたようでいて詳しくは書かれていない。洋一郎の姉がたびたび父のことを悪く言っているが、どんな最低なことを家族にしたのかは具体的には出てきていない。
 洋一郎が、父が死ぬまでの十年間を過ごしたアパートの部屋を見る限りは、ギャンブルをやっていた様子はないし、部屋代を滞納したこともない。父は、ギャンブルは止め、さらに、金にだらしがないという性癖も変えたと見るしかない。
 松尾あつゆきの句集については、図書館の本ということであれば、最近読み始めたのか。このような句集を読み始めた時期はわからなくても、死ぬ間際の父が、原爆句集に共感する心境になっていたのは確かなのだと思う。
 洋一郎が、図書館に本を返却にいけば、父の最近の読書傾向がわかるかもしれない。

 親が死に、子の手元には遺骨や遺品が残る。丁寧に遺骨を墓に収め、遺品を整理しても、親から伝わるもの、気質や体質はなくなることなく、色濃く子に遺伝する。それは、子が親を拒否して、親の遺骨さえ引き取らなくても、同じだ。
 洋一郎にも姉宏子にも父の気質や体質は受け継がれているのだと思う。