新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第104回2018/9/16 朝日新聞
 
 主人公洋一郎の人物像が今まではどうにもイメージできなかった。今回の「なんだか、ひどく疲れてしまった。」という部分から洋一郎の人柄が伝わってくるように感じる。
 
 川端さんは、深みのある人物だと思う。初対面の洋一郎に向かって、川端さんは、まるで次のように諭しているかのようだ。
 「子どもの時以来会うことのなかったお父さんのことを、じっくりと考えてごらんなさい。そして、亡くなったお父さんの気持ちを思いやってみることが、あなたがこれから生きていく上で大切なことですよ。」
 川端さんの「部屋を見てほしい」という依頼は、見てすぐわかるような何かがのこされていたのでなくて、亡くなった老人(石井信也)の息子に、その部屋の片づけを時間をかけてじっくりとさせることだったのだろう。
 こういう発想をする川端さんにますます驚く。