新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第105回2018/9/17 朝日新聞

 前回の感想で、洋一郎という人物のイメージが浮かんでこないと書いた。
 洋一郎は、大学時代の友人二人に好かれ信頼されて、今でも交流がある。だが、その友人の一人である佐山に心の内を打ち明けられても共感はしていたが、激しく感情を揺さぶられるようなことはなかった。
 自分の家族とも円満に中庸に接している。妻夏子との距離も付かず離れずの五十代夫婦の関係だ。仕事には真面目に取り組んでいるが、与えられた職場でベストを尽くすという様子だ。
 要するに、穏やかな人柄でバランスの取れた人間関係を保っている人物だ。今回の挿絵で主人公の表情が描かれているが、まさに挿絵の通り特徴がなく、すぐに忘れてしまいそうな顔だ。
 
 感情の起伏の少なかったその洋一郎が動揺している!