新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第117回2018/9/29 朝日新聞

 我が子の出産のときに、妻の傍にいることができなかった埋め合わせを、初孫の出産でやろうというのは、虫がよすぎる。
 出産と赤ん坊の世話では、なんの役にも立たないおじいちゃんは、せいぜい祝い金を期待されるくらいだろう。
 
 はたして、洋一郎は、孫を目の当たりにして心から喜ぶのだろうか?世間一般では、まだ若いおじいちゃんは孫に夢中になるようだ。だが、洋一郎の場合は、案外冷静でいるような気もする。