新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第118回2018/9/30 朝日新聞

 母親(おばあちゃん)と娘は、娘の出産と赤ん坊を育てることで結び付いている。これは、昔もそうだったし、現代ではますます強まる結びつきだ。
 父親(おじいちゃん)は、娘の出産と赤ん坊(孫)の世話では、重要な役割はない。昔は、父から子へさらに孫へと受け継ぐべき「家」にまつわる様々なものがあった。現代では、父(おじいちゃん)から子へ受け継ぐべきものは遺産しかない。ましてや、おじいちゃんから孫へつながるものは、突き詰めると何もない。
 洋一郎自身は実の父とはつながりを見いだせないでいる。恐らく、祖父母とのつながりもないのであろう。そういう状態で、どうやって孫への情愛を持とうとするのであろうか?ただ、祖父だから、孫だからというのでは、表面的な感情でしかないと思う。
 父と子は、子が独り立ちするまで一緒に暮らす、その時間と過程が父子関係の土台になると思う。祖父と孫も、父子のつながりがあってはじめて成り立つと思う。そうでなければ、ただ、お小遣いをくれるおじいちゃん、小さいころは可愛かった孫というだけで終わる。