新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第120回2018/10/2 朝日新聞

 洋一郎は、我が子の出産に立ち会い、素直に無邪気に感動している千隼くんのことを羨んでいると思う。それを認めたくないのだろう。


 育てたり扶養したりするだけが、親と子どもの関係ではない。子どもが社会人になり、自分の家庭を持ってからも、親子の関係は続く。親が生きているかぎり、いや、墓のことを思えば死んで終わるわけではないし、私と父のように、親が死んでから突然始まった親子の関係だってある。
 ならば、佐山と芳雄くんも同じだ、と噛みしめた。子どもをなくした親も、我が子との関係はずっと、相手が不在のまま続く。

 この部分には、『ひこばえ』の中心となることが書かれていると思う。
 洋一郎は、父が死んでから親子関係が「突然始まった」とはっきりと、ここで認めている。さらに、序章から第四章までを貫くテーマが、「子どもを亡くした親も、我が子との関係はずっと、相手が不在のまま続く」に表現されていると感じる。