新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第125回2018/10/7 朝日新聞

 鼻で笑ってしまう。
 この和尚さんの言いぐさと、持ってきた二つのグラス。
 そして、それを受け容れて、酔った気分になる主人公。
 この大家さんと和尚さんは、世間で迷っている人を救う世直しヒロインとヒーローか。

 そういう見方をすると、佐山夫妻の老人ホームに早く入りたいという思いも現実離れして見えてくる。世の中のすべての若者と子どもを見たくないというのは、あまりに極端だ。もし、そうならば、老人ホームよりも、過疎地か過去のニュータウンに移住する方が希望が叶えられると思う。
 
 主人公自身の家庭での出来事と心情は、現代の世相を写実的に描いていると思う。晩年の住居や、墓についての問題意識も現実そのままだ。そうでありながら、登場人物が不思議な行動を取り始めたように思う。