新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第127回2018/10/10 朝日新聞

 実の父と、父が生きているうちに洋一郎が会っていたら、どうなったか?
 いろいろな場合が想定されるが、たとえ、どんなに父が過去の行動を詫びたとしても、今回の洋一郎のように、スマホの写真を見せながら洋一郎の母や姉、家族のことを話すことにはならないと思う。
 そう考えると、父が死んだからこその今の洋一郎の心境なのだ。父が死んではじめて成り立つ父子の関係だ。
 親が死んで改めて、その愛情に気づくという話はよく聞く。事実そうなのだと思う。しかし、洋一郎の場合はそれとは違うと思う。