新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第133回2018/10/17 朝日新聞

 田辺麻美さんの立場に立てば、優しく子ども思いの年老いた父親と感じたであろう。「カロリーヌおじいちゃん」こと、洋一郎の父の涙は事情を知らない人にとっては心を打つ涙だと思う。

 洋一郎の「嘘だろ‥‥」の気持ちは、ますます深まる。父は、携帯電話に母と姉と洋一郎の名を登録していた、カレンダーに母と姉と洋一郎の誕生日を書いていた、そして姉と洋一郎が子ども頃に大好きだった童話をなつかしがって読んでいた、それらを知った時に洋一郎は、「嘘だろ‥‥」と声に出している。