新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第137回2018/10/20 朝日新聞

 洋一郎の父は、晩年になって、すっかり人格が変わってしまったのであろうか。私には、そうは思えない。
 年を取って、若い頃の自分を悔い改めたのであれば、遺品の中に置き去り同然にした家族への償いの思いを示すものが何かあるはずだ。しかし、今のところは携帯電話の電話帳への登録とカレンダーへの誕生日の書き込みしかのこされていない。
 まるで、別人のようにいい人になったというのでなければ、元々父は童話が好きで、子どもが好きだったということになる。
 金にだらしがなくて、家族にも親類にも迷惑かけるような人柄と、童話好きで子ども好きという人柄は矛盾しない。父が、若い頃から優しい面をもった人であったのなら、父に対する母と姉の見方が偏っていたということになる。
 父の実像は、どうなのであろうか?どう展開するか、楽しみだ。