家族が円満かどうかは、家族それぞれのつながりにかかっている。親を大切にする気持ちは、親と子の間で育まれる。家族間の問題を解決できるのは、その当事者にしかできない。
 深く考えたわけではないが、上のような考え方をしてきた。でも、この小説を読んでいると、そうだろうか、と思えてきた。

 親から子へ、子から孫へ、家族のつながりが保たれるためには、その一家族を取り巻く人々とのつながりが決め手になることもあるのではないか、と思う。
 道徳の観点から、親を祖父母を敬う気持ちを大切にしよう、と教えられても、それは定着しない。世間が、親を祖父母を敬う気持ちと行動を受けいれ、その気持ちと行動を応援するしくみと雰囲気があることが、大切だと思う。

 洋一郎は、父を慕う気持ちを持ち続けながら、自身でも気づいていないと思う。そんな洋一郎の心の底へ、手を伸ばしてくれたのは、今まで縁もゆかりもなかった人たち、大家さんと和尚さんと小さな図書館のスタッフさんだったのではないか。