新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第14回2018/10/24 朝日新聞

 疑問に思っていたことが明らかになって来た。
①洋一郎が母に、実の父、別れた父が死んだことを伝えないのはなぜか。
②洋一郎が母に、孫(母にとってはひ孫)が生まれたことをすぐに言わないのはなぜか。
 この二つの疑問に、姉の意見が絡んでいた。姉は、姉なりに母のこと、そして洋一郎のことを思いやっている。それだけに、こういう姉弟の間柄は、複雑なものだ。

 母が別れた夫のことを心の底ではどう思っていたのか。
 ギャンブルさえしなければ、よい夫であり、よい父であると思っていたのか、それとも、心底から夫のことを嫌いになったのか。
 姉は、父のことをどう思っていたのか。
 物心つくまで姉は、父のことを好きだったのか、それとも、父についてのよい思いではただの一つもないのか。
 今度は、こういうことが疑問になる。