新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第147回2018/10/30 朝日新聞

 幼い洋一郎と姉がカロリーヌの物語を読んでいる。
 洋一郎は、そこに母とそして父もいたことをかろうじて思い出した。洋一郎と違って、姉の宏子にはこの場面の思い出は鮮明なのではないか?次の二か所の表現が思い出される。

第140回感想

 姉は昔、よく私に言っていた。
 「洋ちゃんはずるいよ」
 なにが──?
 「あのひとのこと、消したよね。すごいと思う、皮肉抜きでうらやましい」(第7回)

 
 姉は、父にまつわる記憶をすべて「嫌なことと」として塗り固めている。(第145回)

 
ギャンブルにのめり込み家族や親戚に金の迷惑をかける父と、家にいる時は穏やかで子煩悩な父がいた、と感じる。