新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第154回2018/11/6 朝日新聞

 後藤さんが入居する部屋から富士山を眺めるのを、洋一郎は楽しみにしていた。(第五章)その後藤さんが、七章になって姿を現した。後藤さんには、新しい自分の部屋から富士山が眺められることを喜ぶ気持ちの余裕はなさそうだ。
 第五章で出て来た遠くに見える富士山のことは、後藤さんという登場人物を導きだすものだったのだ。 
 その後藤さんが、この七章で現れたのは、彼が、亡き父のことに間接的につながっていくのだろう。

 孫の誕生は、亡き父の遺骨の前での洋一郎の言動につながった。父が図書館から借りていた『原爆句集』は、司書さんを通して父の晩年の行動を明らかにした。
 小説の中の小さなできごとがそれぞれに関連してくる。