新聞連載小説『ひこばえ』重松 清・作 川上和生・画 朝日新聞 第六章 カロリーヌおじいちゃん あらすじ 

 父が借りていた『原爆句集』を返却するために、洋一郎は、和泉台団地にある「まちの小さな図書館」和泉台文庫を訪ねた。その図書館では、ボランティアの司書をやっている田辺さん母子(母、麻美・娘、陽菜)が洋一郎と大家(川端)さんを迎えた。
 田辺さんは、父、石井信也がこの図書館では、カロリーヌおじいちゃんと呼ばれていたこと、それは、父が、和泉台文庫で、『カロリーヌとおともだち』という童話を見つけ、涙を流して懐かしがり、何度もその童話を読んでいたことからつけられたあだなであることを、話してくれた。
 カロリーヌシリーズの童話と聞いて、洋一郎にある記憶が蘇った。カロリーヌの童話の本は、幼い頃の私と姉に、母が買ってくれたものだった。そして、私よりも幼かった姉が、カロリーヌの本に夢中になった。
 童話の本を和泉台文庫に来るたびに読み、イベントの一つである朗読劇にも、頼まれて、父は出演していた。だから、和泉台文庫に来ていた父には、いいおじいさんのイメージしかなかった。
 そのイメージに耐えられなくなった洋一郎は、田辺さんに、父と私──そして母や姉の関係を説明し、「ひどい父親だったんですよ」と言わずにいられなかった。

 洋一郎は、姉に、父がカロリーヌの本を懐かしがり何度も読んでいたことを伝えた。姉は、感激するどころか、全く興味がないと言い切った。さらに、洋一郎が、携帯電話のアドレス帳第四章あらすじやカレンダーのこと(カレンダーに、母と姉と洋一郎の誕生日が書き込まれていた)を話すと、無言で電話を切ってしまった。

 洋一郎は、妻(夏子)に父が死んだこと、遺骨のことを話した。夏子は、何か面倒なことに巻き込まれないかを心配し、遺骨を引き取ることについては反対した。
 洋一郎は一人で、幼かった姉と自分がカロリーヌの本を読み、そこに母も父もいる光景を思い出し、懐かしいなあ、とつぶやく。