新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第165回2018/11/18 朝日新聞

 「でも‥‥長谷川さん、息子として、それでいいんですか?」

 この小説の洋一郎を取り巻く今までの登場人物は、二つに区分できる。
 姉の宏子・妻の夏子・息子の航太・娘の美菜は、血の繋がった家族だが、洋一郎の実父に対しては特別な親近感や身内としてのつながりを持とうとしない。
 大家の川端さん・道明和尚・和泉台文庫の田辺母子、そして、西条さんは、洋一郎と実父に父子のつながりがあるのを必然だととらえているし、より濃い父子のつながりを求めさえしている。
 これは、世間の風潮の過去と今の違いと重なると思う。
 親子、夫婦は、それぞれの事情にかかわりなく、強くむすびついている、むすびつくべきだというのは、過去の世に通用した考え方と言える。今は、そういう血縁がどんどん薄まっている。先祖からの墓であれ、親の遺骨であれ、事情があれば見棄てることも仕方のないこととされる。
 では、川端さんや西条さんは、古い考え方を洋一郎に押し付けようとしているのか?どうも、それだけではないようなのだが‥‥