新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第169回2018/11/22 朝日新聞

 人との縁を感じる、といっても、古い世間的な常識でとらえているのではなかった。その意味で、私の疑問であった西条さんが古い考え方の人か?感想165回は解消した。

 「わたし、自分の家族で亡くなった人、まだ誰もいないんです。(略)」

 
西条さんは、古い考え方で洋一郎に迫っているわけではなく、逆に新しい家族関係の申し子のような存在だと感じる。西条さんの年齢になって、家族で死んだ人がいないというのは、核家族化と高齢化ゆえだ。
 そういえば、洋一郎の子ども二人は、祖父(洋一郎の義父)の死を、家族の死として感じていないのではないか。また、会ったことすらない祖父(洋一郎の実父)の死を、家族の死と感じることはまったくないと思う。

 これからは、一緒に暮らしている親子、夫婦の死だけが、家族の死ということになっていきそうだ。
 このままでは、年をとればとるほど、人は孤立せざるをえない。現に洋一郎は、ラインのグループでは妻や子からも切り離されている。