新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第171回2018/11/24 朝日新聞

 今まで、洋一郎の母について、得られている情報は僅かだ。
 別れた父については、顔も思い出せないのに、ベランダのこいのぼりのことや、タバコ屋での会話を洋一郎は覚えている。それなのに、母についての思い出はほとんど語られていない。その母がようやく登場した。登場した母に、何か事情が生じたらしい。母は、今は義理の息子と同居なので、その義理の息子との間に何か変化が出たのかもしれない。
 
 子どもが六十歳に近づき、親が高齢になると、親子間では困りごとが増えるのが現実だと思う。寿命が延び、親子が昔よりも長い時間を共有するのは、幸福なこととされていたはずなのに。