新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第187回2018/12/11 朝日新聞

 洋一郎が、現在の母と過去の実の父を関連付けて考えている。
 姉の宏子は、母と父が離婚したすぐ後か、その前から母を苦しめているのが、実の父であることを強く感じていた。それなのに、洋一郎は、そのことを強く感じてこなかったように描かれている。これは、不思議なことだ。当時の洋一郎の年齢や、彼の性格がそうさせていたように受け取れる。
 それが、今になって、義理の息子家族に遠慮して晩年を過ごしている母の様子を知り、実の父を非難する感情が湧き上がってきたようだ。
 神田さんや川端さんが、父のよき思い出だけで、父を偲んでいるせいもあると思う。