新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第190回2018/12/14 朝日新聞

 私自身の気持ちは、神田さん側にいったり、洋一郎側にいったりしている。今回では、はっきりと洋一郎に共感できる。神田さんの言う「親子の情」は、洋一郎と「ノブさん」の間では説得力をもたない。
 それよりも、真知子さんが言った言葉に考えさせられる。

「お父さんのこと、なにも知らないままで、ほんとうにいいんですか?」

 洋一郎はもちろんのこと、神田さんも父の人生の一部しか知らない。