新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第205回2018/12/29 朝日新聞

「後藤さん‥‥さっき食堂で大騒ぎだったんです」(201回)

 この本多くんの言葉が、この程度の騒ぎだとしたら、肩透かしをくった感じだ。こういう施設では、このような出来事も「大騒ぎ」のうちに入るということなのだろう。それとも、この後に後藤さんが本多くんに何か言ったのだろうか?
 今回の出来事では、後藤さんは酒癖が悪いという程度で、アル中でどうしようもなかったとか、酒に酔うと必ず人に迷惑をかけるという様子はない。むしろ、203回の挿絵の顔そのままで、ピントはずれているが、年齢にしては無邪気で気のいい人という感じがさえする。