新聞連載小説『ひこばえ』重松 清・作 川上和生・画 朝日新聞 第八章 ノブさん あらすじ

 神田弘之さん(トラックドライバーで父とは釣り仲間)、西条真知子さん(父が相談していた自分史の担当者)、それに加えて、川端久子さん(父が住んでいたアパートの大家)、田辺麻美さん(父がよく行っていた和泉台文庫のボランテェア)が、父の遺骨のある寺に集まった。この人たちを、洋一郎が呼んだわけではない。線香を上げたいと言い出した神田さんがきっかけとなり、真知子さんも同行したいと言い、さらに、遺骨のある寺の道明和尚が川端さんと田辺さんに、連絡を取ったものだった。
 神田さんは、お経を聞きながら、父のために泣き出し、参列の人たちもそれぞれに父の死を悲しんでいる。醒めた思いでいたのは、洋一郎だけだった。神田さんは、そんな洋一郎の様子を見て、息子として何か思わないのか、と迫る。洋一郎は、それに対して、父の死になんの感情もわかない、と答えるしかなかった。
 また、父が自分の名前の信也を、シンヤとノブヤで使い分けていたらしいことが、皆の話題になる。
 読経も終わり、洋一郎が帰ろうとすると、神田さんは、遺骨を洋一郎の家に置いてやれ、と言い出す。洋一郎は、それも断る。
 神田さんは、父の遺骨を預かり、父に海を見せてやると言い出して、結局、父の遺骨を借りていってしまう。また、真知子さんは、父のことをさらに知りたいからと、父の携帯を洋一郎から借りていくことになった。

 洋一郎は、母に、母の日のプレゼントを送り、久しぶりに電話をする。(母に、実の父の死を知らせることは、姉からかたく止められていた。)
 義理の息子家族と一緒に住んでいる母は、義理の息子に遠慮をしながら暮らしている様子が、電話の内容から伝わってくる。母が、義理の息子家族に、よくしてもらっている、と言えば言うほど、洋一郎は悲しく、悔しくなる。そして、その原因が結局、実の父に行き着いてしまうと感じる。