新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第207回2018/12/31 朝日新聞

 後藤さんと真知子さんは、まったく関係のない人同士だ。だが、この二人に共通のものを感じる。それは、自分なりの親子関係についての考えを、グイグイと他人に押し付けるところだ。
 真知子さんは、父、石井信也に多少の興味を感じているのだろうが、それよりも、父について興味を持たない子、洋一郎に腹を立てていて、そのままにしておけないのだろう。
 後藤さんは、自分の息子について自慢することだけが生きがいなのだろう。その後藤さんの思いが他人にどうとらえられるかにはまったく無頓着なのだ。
 洋一郎は、こういう考えの人、こういう感情の傾向を持つ人を、苦手としていると思う。