新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第215回2019/1/9 朝日新聞

 神田さんの行動は、まるで昭和のトラックドライバーの映画の主人公のようだ。時代が昭和なら、こういう行動は、現実の世間でもあり得たし、カッコよかったのかもしれない。しかし、今はどう見ても、ピントがずれているとしか感じられない。
 洋一郎の父のよい面だけを認めようとする神田さんの態度には、それなりに純粋さが出ているが、遺骨への接し方は、どうにも安っぽいドラマのように感じてしまう。今度は、神田さんは、遺骨をこのまま寺に預けない方法を何か提案するのではないか。