新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第221回2019/1/15 朝日新聞

 新たな命には、過去の命が受け継がれている。これは、事実だ。
 遼星くんには、洋一郎の実の父のどこかが受け継がれている。皮肉な見方をするなら、石井信也の困った面が、洋一郎の子どもにも、孫にも、遺伝しているかもしれないのだ。

 先祖からの命の連鎖を今の人が忘れているわけではない。命の連鎖をどのような行為で表していくかが、今の社会では混乱しているのだと思う。
 その意味で、川端さんは、昔ながらのやり方でそれを表そうとしている。洋一郎の妻、夏子は、川端さんや神田さんとは、違う感覚で、四十九日の法要に参列しようとしている、と感じる。