新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第233回2019/1/27 朝日新聞

 自由気ままに老いていくというのは、このご時世、究極の贅沢なのかもしれない。

 その通りだと思う。実際のところは分からないが、大雑把にとらえて、昭和時代に人生を終えた人は、まだ「自由気ままに老いていく」面が残されていたと思う。それが、昨今ではどんどん変化していっている。幼児は集められて幼稚園バスで幼稚園へ、老人は集められて施設のバスでデイサービスへ、それぞれ気ままさを失わざるを得ない。
 「介護」「終活」「介護サービス付き高齢者用マンション」、そこには、老人の「自由気ままさ」とは、別の何かが存在している。


 『ひこばえ』を読んでいて、大きな疑問が湧く。
 この作品は、ドキュメンタリーのように、こういう今の現実を描きだすだけなのか?それとも、今の現実に何か活路を見出そうとしているのか?
 作者重松清は、この小説のねらい・主題を既に確立しているはずだ。