新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第237回2019/1/31 朝日新聞

 作者の問題をとらえる視点は、幅広い。ゴミ屋敷の主とは、予想しなかった。
 ゴミ屋敷のことは、この小説以外で注目していた。現在、ゴミ屋敷と呼ばれる極端な事例でなくても、不要な物の片付けができない人は多くなっていると思う。使わない物を片付けられずに、程度の差こそあれ、溢れる物に囲まれて暮らしている人の数は、多い。それどころか、不要な物と無駄な物を持たないで気持ちよく生活している人は、私の周りではほとんどいない。私自身も、家の中のある部屋、ある家具の中は、小さなゴミ屋敷になっている。
 もしも、高齢の親が、後藤さんのようにゴミ屋敷の主としてTVで取り上げられたら、どうするだろう?子どもが必死で、片付けたり、説得したり、叱ったりしても、元の木阿弥だろう。病気として医療機関に相談することも難しいし、認知症のように一般に病気としてとらえられることもない。その上、周辺の住民の非難は激しい。
 きっと、困り果ててしまう。

 不要な物、無駄な物を買い込み、処分できずにため込むのは、高齢者だけではなく、今の社会のあらゆる年齢に見られる問題だと思う。