新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第243回2019/2/7 朝日新聞

 洋一郎は、後藤さんについて、当たらず触らずの対応はしないと思う。自分の首が危なくなっても、後藤さんの件を良い方向にもっていこうとするだろう。それは、後藤さんを悪い人と思えないことと、父と後藤さんを重ねて見ているからだ。
 この小説のおもしろい所は、たとえ洋一郎が、本社に盾つくような行動をしても、それが洋一郎本人の意志と信念に基づいたものではない点だ。洋一郎は、自分でもよくわからずに成り行きのままに行動するだろう。