新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第274回2019/3/11 朝日新聞

 はた目には、円満そうで長年連れ添った夫婦なのだが、夫が亡くなると、妻の方はせいせいした顔になるというのは、よく聞く話だ。その逆もあるのだろう。
 若い頃は人気があり、中高年になってからは人望があったとされる人が、実は、いつも表に出さない不満や憎しみをもって生涯を送ったという逸話を聞いたことがある。
 男と女の関係は、わからぬものだ。
 人の本質は、わからぬものだ。