新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第284回2019/3/21 朝日新聞

 父にまつわることは、先ずは姉から幾度も聞かされた。父の遺品整理を始めてからは、姉からの情報は途絶えて、最晩年の父の周囲の人々、川端さんや田辺さんから、好印象の老人であったことを聞かされた。更に、神田さんから、まだ若かった父の様子が良いものと悪いものを含めて聞かされ、真知子さんからは、周囲の人々に迷惑をかけていた父の事実が浮かび上が来た。
 だが、父の心情を洋一郎はつかめないままだ。ノブさんとしての生き方だけでなく、父親として別れた子どもたちのことをどう思っていたのか、それが浮かんでこない。それを知る手掛かりが父が遺した本の中にあるのだろうか?