新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第287~293回2019/3/24~3/30 朝日新聞

 後藤さんは、自分の間違いを認めている。後藤さんが、息子将也さんの育て方を正しかったと思い続けているならば、自分のことを「父親失格」だとは言わない。
 後藤さんは、自分の間違いを理解していない。後藤さんが、中学生までの将也さんへの接し方の誤りを理解していたならば、洋一郎にこんな話をしながら、相変わらず息子の自慢をしたりはしないと思う。
 父親としての間違いを認めていながら、どこがどう間違っていたか、をわかっていないから、「さっさと死んでくれと思ってるんじゃないですかねえ」と、息子の気持ちをとらえているのだと感じる。