新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第331~354回2019/5/9~6/1 朝日新聞

 洋一郎は、なんだかなし崩しに、父の遺骨への愛着が湧いてきたようだ。
 洋一郎が、父の死にかかわっているうちに、命のつながりを実感するようになり、父の遺骨に対しての気持ちが変化したのはわかる。しかし、その気持ちの変化が、列車の中で遺骨を膝に抱いたままでいるというのは、理解し難い。

 父の遺骨、いや父の死への洋一郎の変化しつつある気持ちに、母の長谷川の墓には入らないという意志が突き付けられた。姉の宏子にしても、母の意志の前では、それを否定することはできない。

 血のつながらない子である一雄が、義理の母に対してもっている気持ちは、昨今では常識的なものだと感じる。

 父の死についての全てを話し終えた洋一郎がスッキリしたのは当然だ。むしろ、最初に母に話すべきだったと感じる。だが、父のことを川端さんや神田さんや小雪さんから聞かずに話していたら、それはそれで違った展開になっていた。

 親の老いと死について、子は、悩み迷い、行きつ戻りつすることが自然なのかもしれない。
 子は、親の死から今までは持てなかった考えに至ることがある。それは、大切なのことかもしれないと感じる。