新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第355~362回2019/6/2~6/9 朝日新聞

 実の親と再婚後の親、つまり実の父母と養父母がいる場合、子の立場からすると、実の父母との繋がりが強いのではないかと思ってしまう。しかし、そうとばかりは言い切れないことがよく分かる。
 そして、難しいのは、子も親も、実の親子と義理の親子の本当のところを、本人ですらとらえていないことが世間ではよくあるということだと思う。
 洋一郎の母は、義理の息子夫婦に遠慮しながらの余生を送っているように見える。
 洋一郎自身は、義理の父である隆さんを、心の底から父と思うことがなかったと感じている。
 洋一郎と洋一郎の母のこのような感覚は、二人の心の一面であったことは確かだ。一面であったが、違う面もあったのだ。
 母は、再婚を心から幸せだったと感じ、義理の息子夫婦に感謝している。洋一郎は、今になって、隆さんを父として懐かしんでいる。
 
 洋一郎本人ですら気づかないできた心の底にわだかまっていることを浮かび上がらせるのが、実の父の死だったのだと思う。