新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第404回2019/7/23 朝日新聞

 父の遺骨の前にいると、そこにいる人の気持ちが落ち着くようだ。荒んでいた後藤さん、息子のスキャンダルで追い込まれているに違いない後藤さんが、今までにない良い雰囲気の話しぶりだ。それは、この部屋のせいなのか、それとも洋一郎の打ち明け話のせいなのか。恐らく、その両方だろう。
 設備が整い、見晴らしの素晴らしい高層の施設の部屋よりもこのアパートの部屋の雰囲気に、後藤さんがすっかり馴染んでいる。