新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第405~412回2019/7/24~7/31 朝日新聞

 尊敬し、逆に反発し、いつしか疎遠になり、互いに年を取ると、介護する方と介護される方になる父子の関係。
 洋一郎の場合は、音信不通になっていたという特殊事情はあるのだが、根本的には煩わしい関係でしかなかった父との関係がどんどんと変わる。もしも、父の遺品整理をしていなければ、後藤さんの扱いも施設長としてのマニュアル通りに処理されたであろう。後藤さんは、息子のスキャンダルが起きる前に、施設から退去させられるか、またはスキャンダル後であれば、息子の会社の指図通りに施設から出ていたであろう。
 そうはならなかった。洋一郎は一人の男として、父親世代の一人の老人のことを考えている。そして、第三者としてスキャンダルをおもしろがるだけではない他人(川端さんや、神田さん)が、動き始めている。