新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第450~460回2019/9/8~9/19 朝日新聞

 小雪さんは、すっかり弱ってもその気風の良さを失っていない。そして、ノブさんの遺骨に丁寧に接している。見上げた人生の終末期を過ごしていると感じる。
 更に、彼女の最期の時間を共に過ごす人たちは、温かく、しかも若い人が多い。羨ましい限りだ。

 しかし、相変わらず、私には納得ができない。

 私は、父の息子──ただそれだけなのだ。

 洋一郎のこのすっきりとした結論を聞くと、ますます小雪さんのことが納得いかない。小雪さんも神田さんも、自分の子に、洋一郎が得たこの結論を味わわせることがない。それどころか、自ら、子を持つことを拒否して来たと思う。また、ノブさんこと洋一郎の実父は、家族を得たが、それを捨ててしまった。

 そういう人たちに、「ひこばえ」の大切さを教えられた、と言われても、なんとも納得できない。
 小説の中だと言われても‥‥