本屋のとなりは写真館

朝日新聞連載小説『国宝』『ディス・イズ・ザ・ディ』の毎回ごとの感想と、読んだ本の感想を更新しています。

カテゴリ: 連載小説 あらすじ 金原ひとみ作 クラウドガール

 母の未完成の遺作を預かっている高橋は、その原稿の中に遺書と思われる文章があると言う。理有は、高橋のその推測を否定し、その文章を読みたいとも言わない。
 
 理有は、連絡のつかない杏のことがいよいよ心配になる。杏のことを心配しながらマンションに戻った理有が、目にしたのは、美容師の広岡さんと裸の杏がベッドにいる姿だった。理有は、広岡さんと杏を、既婚者と高校生の不倫だとなじるが、二人は悪びれた様子も見せない。二人に幻滅した理有は、自分のマンションから飛び出した。そこへ、光也から、杏が晴臣の浮気を見つけて、三日前から晴臣の家に戻っていないことを知らせるメールが届く。杏の事情を知らされても、理有に杏を許す気持ちは起こらない。

 杏は、晴臣の家を飛び出して、広岡さんの美容室へ行き、その後の三日間のほとんどを広岡さんと一緒に過ごしていた。
 広岡は、杏の傷の手当てをし、彼女の面倒を見た。さらに、広岡は、杏と理有のマンションで、誘われるままに杏とセックスをした。そして、部屋の写真から、広岡は、自分の客だったユリカが、理有と杏の母であったことを知り、それを杏に話した。
 いつまでも、フラフラしていられないと思った杏は、自分たちのマンションに戻る。杏は、晴臣とよりを戻すつもりはなく、これからは高校へも行き、広岡さんとの仲も続けようと思っている。

 理有と光也と杏と晴臣の四人が顔を合わせた。晴臣と光也は打ち解けた雰囲気になるが、杏と理有は互いに反発し合う。
 四人が一緒に食事をして以来、杏には理有を拒否する気持ちが強まり、ほとんどの時間を晴臣のマンションで過ごすようになった。晴臣は、杏と一緒にいられることを喜び、結婚しようとまで言い出した。
 そんなある日、杏が留守をした間に、晴臣は、浮気相手をマンションのベッドに招き入れていた。その現場を目にした杏は、浮気相手の女を暴力で追い出し、気を鎮めようとする晴臣を相手にせず、部屋中暴れまわった。杏は、その興奮の中、再びパニック発作を起こした。パニック発作が収まった杏は、謝り続ける晴臣に別れると言い残して彼のマンションを出て、行く当てもなく歩き続ける。

 母の三回忌に来ないだけでなくメールの返信もない杏のことを、理有は心配になりだした。
 その三回忌で、理有は、編集者で一時期は母の不倫相手だった高橋と会った。高橋は、母の死は自殺ではなかったのかと理有に問いかけた。理有は、それを強く否定した。
 高橋は、誰にも知られていない母の遺作原稿を持っていることを理有に告げた。

 《作家だった母の三回忌。晴臣(はるおみ)の浮気を目の当たりにした杏(あん)は、姿を現さなかった。姉の理有(りう)が他の親戚たちと墓参りをしていると、母の担当編集者、高橋が現れる。彼は母の遺作を預かっていると告げた。》

 
杏の行方が分からないことは、少ししか触れられていない。遺作があったことが、はっきりと書かれている。

 理有の恋人が広岡さんではないかと疑った杏は、晴臣と二人で広岡さんのいる美容室に行ってみた。そこで、杏はパニック発作を起こしたが、広岡さんの冷静な対処のおかげで無事に発作は収まった。晴臣は、それ以来杏のことを心配し、彼女と離れて暮らすことを不安がるようになった。晴臣には、心臓の持病があり、去年発作を起こしていた。
 杏の希望で、杏と晴臣と理有と光也の四人が顔を合わせた。

理有
杏の姉。大学生。半年間のマレーシア留学から戻って来て、妹の杏と二人暮らし。喫茶店で働いている光也と知り合い、付き合うようになった。


理有の妹。高校生。同じ高校の晴臣が恋人で、一人暮らしの晴臣のマンションに入り浸っている。美容室でパニック発作になった。

ママ 中城ユリカ 
理有と杏の母。作家だった。心臓病で急死したとされているが、真実は自殺で、そのことは姉妹と姉妹の祖父母しか知らない。また、自殺の現場を姉妹が見ていたことは、姉妹二人だけの秘密になっている。

パパ
理有と杏の父。母のユリカとは離婚した。フランスで大学講師をしている。理有とスカイプで連絡を取り合っている。

光也
喫茶店で働く25歳。初対面から理有を好きになった。引きこもりを乗り越えた経験を持つ。理有の母の著作を読んでいた。

晴臣
高校生。杏の恋人。高校生ながら、マンションで一人暮らしをして派手に遊んでいる。母親は女優で、長岡真理。持病の心臓病が悪化し、死の直前までいった。

広岡
理有が以前から行っている美容室の美容師。理有の気持ちを理解している。杏がはじめてこの美容室に行ったときに、パニック発作を起こしたが、広岡の冷静な対応で事なきを得た。

 60回に、作者によるあらすじが載った。引用する。

 《作家だった母の死に関わったという秘密を抱える杏(あん)と理有(りう)の姉妹。杏は、真面目な姉の理有が美容師と不倫していると疑い始める。仲直りした交際相手の晴臣(はるおみ)と二人で、姉の通う美容室を訪れることにした。》

 
母の自殺の時の姉妹の行為は、「秘密」と表現されている。
 杏と晴臣が美容室に行ったことが取り上げられている。このことから、ストーリーが大きく発展するのか?

 杏が、家族について回想する。
 両親の離婚。母と姉妹の三人になる。母が急死する。姉妹は祖父母と暮らす。祖父母の家を出て、姉妹二人だけで暮らす。姉が留学する。姉が帰ってきて、姉の理有と妹の杏二人の生活が再開される。

 母は、中城ユリカ、小説家だった。

 理有は、喫茶店で働く光也に好意をもった。二人の仲が深まりそうになったときに、光也が母の著作の読者であることを知らされた。その途端に、理有は光也の店から逃げるように飛び出した。部屋に戻った理有は、光也からの何度ものメールに返事をする気になれない。
 動揺する理有は、パリのパパとスカイプで話すが、気持ちは安定しない。そんな理有に、美容師の広岡さんから誘いのメールが入る。理有は、広岡さんの誘いに応じて‥‥

 晴臣は、生死の境をさまよう状態になったがそこから回復した。 ※原因はまだ明かされていない。

 酔って帰宅したママの部屋から不審な物音がした。理有と杏が、ママの部屋をのぞくと、そこは血だらけでママが倒れていた。杏は、救急車を呼ぼうと言った。が、理有は、「間に合わない。ママは死ぬ」と言い、ママの異変に二人は気づかなかったことにしようと杏を説得した。理有に盾つくことができずに、杏もママをそのままにして二人で理有の部屋に戻った。しばらくして、祖父母がマンションにやって来て、ママの部屋に入った。祖父母は、理有と杏がママの自殺に気づいていないと思い込み、ママの様子を見せずに、理有と杏をマンションから連れ出した。祖父母は、手を回してママの自殺を隠蔽し、ママの死を心筋梗塞による急死であったことにした。理有と杏が、ママの自殺に気づいていながら何もしなかったことは、二人だけの秘密になった。
※杏の回想として書かれている。※ママの死は、作中の現在からほぼ二年前(理有大学生、杏中学三年生)のできごとだった。※晴臣が入院したのは、ママの死から一年も経たないころ。

 第30回では、本編にあらすじが掲載されている。おそらくは作者自身のものであろう。全文を引用する。

 《浮気した交際相手の晴臣を殴りつける奔放な高校生、杏。彼女の元に、留学先から姉の理有が戻ってきた。理有は、立ち寄った喫茶店で店員の光也と出会い好意を抱く。杏は、晴臣との交際に悩んでいた。》

 理有は、母がコレクションしていた気味の悪いぬいぐるみをきっかけとして、光也と知り合った。光也は引きこもりを、ぬいぐみを持つことによって克服した自身のことを話した。理有は、母が心筋梗塞で急死したこと、亡くなる数年前から強迫神経症のような様子を見せていたことを話した。知り合って間もないのに、二人はそれぞれの心の内を明かす関係になった。
 杏は、理有に促されてしばらく行かなかった高校へ登校する。登校途中、晴臣に会う。晴臣は、土下座せんばかりに杏に謝った。杏は、そんな晴臣を信じられず、過ちを繰り返すだろうと思いながら許してしまう。
 杏の口から、姉妹の父のことが語られ始めた。姉妹の両親は離婚をしていた。


 あらすじを書くことを意識したことはなかった。書いてみると、おもしろい。あらすじといえども読者によってみな違う。読書感想が個々に違うのと同じだ。ストーリーのどこに注目したか、どの登場人物のどこに注目したかが表れる。

 半年間のマレーシア留学から帰国した理有は、大学生活に戻り就職活動を始めようとしている。しかし、マレーシアで住み続けたかったという思いを今も持っている。
 半年ぶりに美容室で髪をカットし、買い物をした理有は、飾られていたベスティのぬいぐるみが気になって、ある喫茶店に入った。その店の若い男の店員は、そのぬいぐるみを好きだと言う。
 ベスティのぬいぐるみは、理有にとって母の思い出につながる。記憶の中の母は、モノトーンの物しか身の回りに置かないのに、気持ちの悪いぬいぐるみを愛していた。

 杏は、16歳高校生。一人で暮している。同じ高校の晴臣が恋人。晴臣の母は、有名女優らしい。晴臣もマンションで一人暮らしをしているらしい。
 ある夜、杏は晴臣の浮気の現場を知り、彼を携帯で殴り、警察に通報され補導された。晴臣の母のマネジャーの計らいで警察から返された杏を待っていたのは、半年間留学をしていた理有だった。杏は理有が帰国したことを喜んだ。

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