本屋のとなりは写真館

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

カテゴリ: 新聞連載小説 吉田修一作 国宝 の感想

『国宝』の特徴①語り手の存在 連載小説を読んでいるのに、まるで、舞台を観ているような気分になった。小説中のこととしても、できごととできごとのつながりや時間の経過が妙なところがあったが、舞台上で場が変わるような感じで、そこに違和感を感じなかった。それは、場…
>>続きを読む

 「徳次」は、「喜久雄」よりも「俊介」よりも愛着を感じる登場人物だ。 「徳次」は、仁侠の人として描かれていると思う。信義を重んじ、義のためには命を惜しまない。「徳次」は、「喜久雄」のためなら命を惜しまないといつも言い続けてきた。そして、それを「綾乃」を救…
>>続きを読む

 「春江」と「市駒」と「彰子」、この三人の「喜久雄」を巡る関係を考えれば、互いに憎み合っても無理はない。 それなのに、この三人は憎み合うどころか、互いに感謝し、尊敬し合っている。 「俊介」から、丹波屋の御曹司の位置と役者のプライドを奪ったのは、「喜久雄」…
>>続きを読む

 『国宝』の主人公は、歌舞伎の舞台に立つ魅力に取りつかれただけの人間だった。 『国宝』の全編を通して、「喜久雄」は、空っぽの人間に描かれていると感じる。  好きになった「春江」と「市駒」と「彰子」、認知した娘「綾乃」、綾乃が生んだ孫娘「喜重」、育ての母親…
>>続きを読む

 悔しい思い、辛い経験、幸福でないことそれもとてつもなく幸福から遠いこと、それに負けなければ、人は、他の人々を幸福にできるものを生み出すことができる。 作者は、こう書いていると感じる。 「俊介」が父の代役に指名されていたならば、「俊介」の長男が健やかに育…
>>続きを読む

 好きな台詞。今や丹波屋の若女将となった春江と、人気のお笑い芸人弁天との会話。「いや、ほんまやで。万が一でも俺がお偉いさんなんかになってもうたら、それこそ『天下の弁天、万引きで逮捕』とか『天下の弁天、痴漢の現行犯』とかな、一番みっともない姿晒(さら)して…
>>続きを読む

 小説『国宝』には、何か所かの名台詞がある。私の好きな台詞を挙げていく。 初対面の「俊介」と、「喜久雄、徳次」の間が一触即発、乱闘騒ぎになりそうになった。そのとき、「幸子」が言う。「あー、面倒くさい。どうせ、アンタら、すぐに仲良うなるんやさかい。いらんわ…
>>続きを読む

①どんなときにもへこたれない。②自分で自分の仕事を見つけて働く。③切り替えが速く、一度決めたら迷わない。④この人を支えようと決めたら、とことんその人の面倒をみる。⑤愚痴や恨み言を言うことがほとんどない。 小説『国宝』は、歌舞伎役者の物語だ。だから男の物語…
>>続きを読む

 私は、『国宝』の主人公に、連載の読み始めから最後まで親しみも畏敬の念ももてなかった。しかし、最終回の主人公の背中には、思わず精一杯の拍手をした。 その理由は、歌舞伎の舞台に打ち込み続けた喜久雄の姿に、心うたれたからだ。 喜久雄は、大きな名跡を求めず、三…
>>続きを読む

 春江は、自分と母を辛い目に遭わせた育ての父である松野を、憎んだ。薬漬けになった俊介を救い出す際に、松野は春江の助けになった。しかし、そのときの恩を感じながらも、松野を憎む気持ちは決して消えなかった。 綾乃は、父、喜久雄のスキャンダルのせいで幼いころに深…
>>続きを読む

 たとえ、喜久雄が正気を失い、今までのようには舞台に立てないとしても、心配はないと思う。 喜久雄の社会的な面は、三友社長の竹野と中国の白河公社社長が万事遺漏なく処理するであろう。そして、身の回りのことは彰子、春江、綾乃が包み込むであろう。一豊、市駒、喜重…
>>続きを読む

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第499回2018/5/28 綾乃のことを見知っている観客は、少なくないはずだ。その綾乃がなりふり構わず、一人で拍手をした。 春江は、俊介のライバルをまだ生まれぬ孫に見せた。 綾乃も春江も、今が、喜久雄の最後の舞台だと直…
>>続きを読む

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第498回2018/5/27 綾乃が、胸をつかれたようにハッとした。第十九章 錦鯉 12 462 挿絵 最も印象に残っている挿絵の一枚だ。リュックを背負う綾乃、そして、外見は子煩悩の父に見える喜久雄だ。その喜久雄が、祈ったこと…
>>続きを読む

 本人はまだ知らぬが、人間国宝に認定され、万座の観客を魅了している喜久雄は、何を見、何を感じているのか? 役者として、完璧な今の自分に満足しているようには感じられないのだが‥‥   共演の京之助が、喜久雄の様子について、一豊に次のように尋ねた。「いや、誰…
>>続きを読む