本屋のとなりは写真館

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

カテゴリ: 重松清作 連載小説『ひこばえ』の感想

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第303~301回2019/4/9~4/17

 高齢者として、老人みんなを一括りにされてはたまらない。後藤さんもノブさんも困った人ではあるが、それぞれの人生があった。
 ハーヴェスト多摩は、理屈としては理想の高齢者住宅だ。でも、洋一郎が思う通り後藤さんにとっては、終の棲家としてはふさわしくない。
 ノブさんが死ぬまで住んだ和泉台ハイツは、老人の一人暮らしとしては条件がよいとは言えない。だが、ノブさんは、そこで落ち着いて彼らしく暮らしていた。
 今までの二人とは違う高齢者の暮らし方をしている小雪さんが登場した。そのシェアハウスは、ずいぶんと条件に恵まれた設定になっている。ちょっと、理想的過ぎるがどう発展するのだろう。


 父親失格でない人が、今の世間にいるのだろうか?
 息子を独立した人格として認め、息子の自主性を大事にして息子の個性を伸ばす育て方をする。老いた父は、息子に尊敬されながら息子とは別の暮らしをする。
 そういう父親が父親合格なのか?そんなのは、嘘くさい。
 父親だれしもが、後藤さんの要素を持っていると思う。ただ後藤さんは、息子の学校での成績や就職先、そして自分の会社での位置に重きを置き過ぎている。そこが、つまづきの原因であり、立ち直れない理由だと感じる。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第298~302回2019/4/4~4/8 朝日新聞

 後藤さんは、洋一郎に自分の情けない部分を全て打ち明けたと思う。もし、これ以外にもっと何かあったとしても、それは後藤さん自身も気づいていないことであろう。
 息子と奥さんへの虚勢が消えてからの後藤さんの生き方は、父親として失格というだけでなくて、人としての生き方に問題があったと思う。

 後藤さんの過去が明かされても、読者として何かすっきりしない。それは、今までの疑問が消えないからだ。
①後藤さんは、なぜ洋一郎に全てを話したのか?
②今の後藤さんの息子への本心は?
③後藤さんの話を聞き終わった洋一郎の気持ちは?

 息子に賭けた父親の生き方が示されたが、それと洋一郎の父の生き方は違うものとして描かれるのだろうか?

 後藤さんの打ち明け話を聞いている時の洋一郎の冷たい感情が、気になる。後藤さんのことをただの入居者として扱えなかった今までの気持ちと矛盾するように思う。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第297回2019/4/3 朝日新聞

 ここまでのことを、洋一郎に打ち明けるのはどんな心境なのか?そして、父親を見限った息子のことを、現在でも自慢し続けるのはどんな心境なのか?
 単なる見栄ではないだろう。そうしなければ、後藤さんは、自分が今、生きている意味を見いだせないのかもしれない。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第296回2019/4/2 朝日新聞

 我が子の育て方、親と子の関係、これを間違ったつけは大きい。

 後藤さんは自分の弱さを打ち明けることで、ほんとうは、もっと弱い自分を隠して、ごまかしている。

 洋一郎のこの見方は正しいと思う。もし、後藤さんが、この時に自分の弱さを、妻と息子にすべて晒すことができたなら、現在のような息子との関係にはならないと思う。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第295回2019/4/1 朝日新聞

 後藤さんは、息子に自己のすべてを注ぎ込んだ挙句、それが裏切られてどうしようもなくなっていた。 
 息子をまるで、父の所有物のように考えることの間違い、さらに、いつかは息子が父から離れていくことを思わない間違い、これに気づかなかったのが不思議なほどだ。

※退院できました。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第294回2019/3/31 朝日新聞

 自分が会社ではその他大勢でしかないから、息子に賭ける父。親父本人はどこもエラくなくて、親父が勤める会社が大きいだけと見抜く息子。
 なんとも悲しい父と息子。
 だが、現実には、後藤さん父子だけではないと思う。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第287~293回2019/3/24~3/30 朝日新聞

 後藤さんは、自分の間違いを認めている。後藤さんが、息子将也さんの育て方を正しかったと思い続けているならば、自分のことを「父親失格」だとは言わない。
 後藤さんは、自分の間違いを理解していない。後藤さんが、中学生までの将也さんへの接し方の誤りを理解していたならば、洋一郎にこんな話をしながら、相変わらず息子の自慢をしたりはしないと思う。
 父親としての間違いを認めていながら、どこがどう間違っていたか、をわかっていないから、「さっさと死んでくれと思ってるんじゃないですかねえ」と、息子の気持ちをとらえているのだと感じる。

※入院しているので、手元にあるのは、3月23日の回までです。以降の回はまったく読んでいません。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第286回2019/3/23 朝日新聞

 ちょっと待てよ、と思った。むしろ、これはチャンスではないのか?

 後藤さんの息子将也さんからは、相変わらず直接の電話がないようだ。洋一郎は、後藤さんの件を解決するというよりも、後藤さんと息子の将也さんの関係を突き止めたくなっていると思う。


 「これ以上迷惑をかけないように、早く死ななきゃいけないんですけどね‥‥」

 
現実の社会で、こう思っている高齢者は、決して少なくない。
 日本が、治安の安定した豊かな国であるのはある側面でしかない。多くの高齢者がこう感じて、若者もそれを否定できないというのは、世間の在りようとして間違っていると感じる。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第285回2019/3/22 朝日新聞

 『剣客商売』の父は、理想の父親だ。そして、今は時代小説の中でしか描けない父と息子の関係だ。息子が「窮地に陥ったところを、さらりと、粋に救う」、こんな父親になれたらどんなにいいだろう。この小説を読んだことはないが、読みたくなる。
 洋一郎と父にはまったく縁のないようなことだが、だからこそ、父はこの小説の主人公である「秋山小兵衛」に憧れをもったのだろうか。
 いったい、石井信也は息子洋一郎にどんな思いを持っていたのか、謎は深まる。一緒にいた頃の息子を「こよなく愛して」いたことは、洋一郎の思い出の断片から察せられるのだが。

このページのトップヘ