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朝日新聞連載小説『国宝』『ディス・イズ・ザ・ディ』の毎回ごとの感想と、読んだ本の感想を更新しています。

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朝日新聞連載小説『春に散る』第25回
 舞台は一挙に日本の成田空港に飛びました。
 40年ぶりの日本なのに、「広岡」は、何のみやげも持っていません。空港に出迎える人は誰もいません。キーウェストに行ったときと同じ格好でした。
 
 海外旅行にボストンバッグを一つだけというのは、私にはできそうもありません。でも男としては格好よいに違いありません。余計な荷物を持たないというのは、生き方にも関係してくるのではないでしょうか。

朝日新聞連載小説『春に散る』第24回
 「広岡」がアメリカでの手術を断った理由が分かってきました。
 それは、「日本に帰ろうと思うんです。」という気持ちからでした。でも、その日本に帰りたいという思いは、懐かしさと故郷恋しさだけではないようです。

どうして日本に帰らなければならないのか自分でもよくわからなかった。だが、日本にも何かの心残りを残しているように感じられる。それが何なのかまったくわからないままに何かをし残しているという感じがしてならない。

なかなか複雑な心境です。それを巧妙に表しています。好きな表現です。

朝日新聞連載小説 『春に散る』第23回
 主人公に、何か重大なことが起こっているのだろうという予想は当たりました。若い頃の心臓発作後の治療に更に本格的な手術による治療が必要なことを、医師から告げられていたのです。
 「広岡」は、その手術を受けることを断っています。

胸骨を二つに割って胸を開けるという手術をする前に、何かしておかなければならないことがあるような気がしてならなかった。

 「広岡」の心境がこのように書かれていました。

 私は数ヶ月前に、開腹による手術を勧められて、それを受けました。手術はうまくいって現在は体力の回復に努めています。
 リスクを伴うような手術を受けるかどうかを決断する前は、その手術を受けることが必要かどうか、そして可能かどうかを、診断してもらうまでの検査に長い時間がかかりました。そして、その検査の間の入院中は、精神的な動揺がありました。むしろ、手術を決断して、実際の手術と予後の治療のための入院中の方が、気持ちは楽なくらいでした。                              

 主人公の手術を決断する前の気持ちに共感できました。

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