まだ入院中に、読み始めた。退院してからも、テレビやラジオしか受け付けない期間もあった。一日に何回か本を読むようになったが、一冊の本を読み継ぐということが、どうにも疲れた時期が長かった。
ようやく、『赤猫異聞』浅田次郎著を読み終えた。読んでよかった。四人の語り手によって、話が進んでいく構成が、時間がかかった理由であり、中断を重ねながらでも読み切ることができた理由でもある。
「工部省御雇技官エイブラハム・コンノオト氏夫人スウェイニイ・コンノオト」こと「白魚(しらうお)のお仙(せん)」の言葉は、次のように表現されている。
おうおう。典獄だかヒョットコだかしらねえが、おめら横浜くんだりまでいってえ何をしに来やがった。好き勝手にあれこれ調べ上げたあげく、面と向き合やア人ちげえかもしれねえだの相手が悪いだの、役人の風上にもおけねえ、いやさ、男の風上にも置けねえ野郎どもだ。
時代考証がどうのこうのではなくて、こういう話し言葉を読めたのはおもしろかった。
読むことによって、話を聴くことができる、それだけでもこの小説の価値はある。
講演会などではなくて、面と向かって人の話を聴くというのは、楽しい行為だ。私には、最近そういう経験が少ない。
ただし、面と向かって会話をする場合でも、聴き手のことを考えない話し手の場合は、楽しいどころか、腹立たしい行為になってしまう。

にほんブログ村
にほんブログ村