朝日新聞連載小説『それから』 平成27年4月1日分
新聞は以前から購読していますが、連載小説を読んだことはありません。今の健康状態は、ものを読むには適していますが、他のことをするには制約があります。これも、与えられた機会です。連載小説が、今月から新しく始まるので、楽しんでみます。
『それから』を、私が読んでから、驚くなかれ50年近く経っていました。冒頭部分はほとんど記憶にありません。
こんなにも色彩と音が描かれ、さらに細やかな映像が浮かんでくる冒頭部分だったのは驚きでした。
彼は胸に手を当てたまま、この鼓動の下(もと)に、暖かい紅(くれない)の血潮の緩(ゆる)く流れる様を想像して見た。これが命であると考えた。自分は今流れる命を掌(てのひら)で抑(おさ)えているんだと考えた。それから、この掌に応(こた)える、時計の針に似た響(ひび)きは、自分を死に誘(いざな)う警鐘のようなものであると考えた。
今更一読者が言ってみても何の発見でもない、と言われるでしょうが、すごい文章力だと言うしかありません。
命というものを、どうやって感じ取るか。
そして、命というものが、限りあるものだということを、どうやって言葉で表すか。
言葉で表すだけでなく、そこには、真実が描かれていると思いました。