朝日新聞連載小説『それから』夏目漱石第45回
朝日新聞2015/6/3文芸・文化掲載 「悪」解き明かす本を 姜尚中
 働きたいのだが働き口がない状態が、「平岡」のこととして描かれています。これは、現代の言い方でいうと、大手の企業を自分から辞めた人が再就職しようとしても自己の経験と能力を生かせる就職先がない、ということです。そして、これは現代ではたびたび見せつけられる現象です。
 『それから』の舞台となっている世間が、不景気で、本人に能力と意欲があってもそれに見合うような勤め先がなかったことが書かれています。そして、ここから当時の社会の様子が分かります。ただ、分かると言うだけでなく、作者夏目漱石の目を通して、明治の社会が人々に何をもたらしていたかについて考えることができます。

 私は、平成の今も、同じことが起こっていると感じました。
 求人率が上がっていると言われますが、それは大都市の新卒者にだけ当てはまることに見えます。地方都市の転職者と人口が減っている地域では、働き口は極めて限られた職種になります。それは、働く環境に恵まれた社会とは言えないと思います。

 『それから』と、同じ紙面で、姜尚中の次のように書いていました。

資本主義の本性が出て、人間が社会性を失っていく。

いま、人間は自己中心のガリガリ亡者になって、社会はあてにできない。

 このように姜尚中が書く平成の社会と、漱石が描く社会とに共通する要素が多いと感じてしまいます。ブログランキング・にほんブログ村へ