朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第98回2015/7/9

 勝負事には勝ちと負けがある。勝ちと負けしかない。

 アメリカで、世界チャンピオンへ近づいていたが、突然の病のせいでボクシングを諦めた。
 日本チャンピオンを目前にして、理不尽な判定のために、敗者となった。
 県大会の優勝を目前に、味方の援護がなかったために、敗戦投手となった。
 作者は、主人公のこの経歴を、どう描いていくのだろうか。力がありながら、運に恵まれなかった敗者なのか。それとも、この巡り合わせは何かが不足したせいか。

 過去を思い出させるのに、電車内の場面から書くなんて、なんてうまいんだ。