朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第155回2015/9/6

 夫に先立たれた妻は、その後の人生をしっかりと生きる場合が多いようだ。しかし、妻に死なれると、夫はダメになるケースをよく聞く。
 独身の男性は、結婚している男性よりも平均寿命が短いそうだが、それもうなずける。

 なんだか現代日本の男性の老後の生活は寂しく哀しい。

 だが、しかし、でも…
 本当にそうなのか。体力がなくなれば、どんな仕事をしていても若い頃のようには進まなくなる。老人同士の付き合いは、若い人同士の付き合いのような華やかさはなくなる。病気にもなれば、大切な人と死別することも増える。
 自然なことではないか。

 日本は平和だ。物は豊富だ。
 日本の老いた男たちよりも、もっともっと寂しく悲しい思いをしている人が、世界中にいっぱいいる。

 昔の思い出にしがみつき現在に落胆する。「広岡」は、そんなことはしないと思う。